「タバコ、大丈夫ですか?」と聞きながらスマホよりも小さいタバコの紙箱を取り出す人がいるけれど、僕は大体大丈夫と答えている。
「こういう時、だめって中々言えないよね。わたしはタバコ大丈夫なんだけど、ほんとにだめな人いたとしてもさ。」
「あ、でも、僕はだめな時はやだって言いますよ。」
「だめな時あるんですか。」
「体調悪い時は。」と頷きながら僕は言う。
「そうなんだ。」
「あと、体調は普通なんだけど、タバコだけ辛いってこともある。だから、毎回聞いてくれるのは助かります。」
ということを話していると、子供の頃のことが頭の中に去来した。
「昔は全然だめだったなあ。」
「へえ。」
「父が煙草吸う人なんですけど、あ、今は吸ってないかも、で、ソファに寝転がって煙草吸い始めるといつも僕咳してました。」
「辛いね。」
「まあ。」
「北市君もだけど、お父様も辛いよね。子供が咳するって。」
「うん、なんか、それを狙って咳しているところもあったけど。」
「別の部屋とかに行くとかも、あったかも知れないですもんね。」
「うーん、まあ一応。でもリビングにストーブあるからあんまりみんなそこから動くことは考えてなかった気がする。」
「さすが北海道。」
「いや勿論、部屋にもストーブありましたけどね。点けても室温が上がるまでに時間が掛かる。」
「エアコンじゃなくてストーブなんすね。」
「うん、灯油のやつ。」
「あれって、変な臭いしない? あんまり使ってるの見たことはないんだけど。」
「あー、変、かどうかは分からないけど確かに臭いしますね。あの臭いも苦手だったかも。」
「結構匂いに敏感だよね。」
「今も辛いですか。」と、彼は目の前の煙を掻き雑ぜた。
「いや、今はだいぶ人間じゃなくなってそういう繊細さは無くなったから、大丈夫になってきました。」
「あっそう。」
「だから、『タバコ、大丈夫ですか?』って聞かれるのは、『お前は今人間なのか? できれば人間じゃなくあってくれ』ってことですね。」
「あっそう。」
タイトルは、『場内でのおタバコは……』を思い出したので決めました、映画の話は憶えてないけど煙草の所だけちょっと憶えててる、と思っていたのだけど、ググったらそんな本は無さそうですね、幻の記憶……。
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